PHOTO LOVE LETTERS Vol.2

 

2通目のPHOTO LOVE LETTERは、ポートフォリオ「ものくろおもい」からの抜粋です。

Bride in Black & White

Silence in the big day 〜祝宴の前の静けさ

 

Her sister’s wedding 〜姉の婚礼

 

Bride’s got ready 〜おしたく完成

 

Bride’s getting ready 〜花嫁支度

 

Bride in the dark 〜光を感じるための闇

 

ここに掲載した写真は、すべてモノクロフィルムで撮影し、自家暗室で手焼きプリントしたものです(プリントをスキャンしてネットに掲載しています)。

2010年代前半まで、私はデジタルカメラの他にフィルムカメラも持参して、主に支度中の花嫁ポートレイトを撮影していました。

それらの写真は、やはり、いわゆるウェディングフォトとは違う、独特の「色気」を宿していると感じます。

アナログカメラやフィルム、薬品、印画紙の相次ぐ製造中止や値段高騰などの消極的な理由、

そして、これからはデジタル・モノクロ写真を極めようという積極的な理由により、

全ての写真をデジタルのカラーデータで撮影し、Light Roomでモノクロ現像することに決めた時、これまでの集大成として、また、これからの私自身のモノクロ写真づくりの手本とするために、この「ものくろおもい」という、1冊のポートフォリオを作ったのでした。

単に昔を懐かしむためでなく

新しい未来を拓くために

今、改めて「ものくろおもい」を見つめ直している私です。

by Pentax MZ3, 50mmF/1.4,  ILFORD XPⅡ2


ー「ものくろおもい」序文ー

ずっとずっと昔_ たまたま、テレビで舞台中継を観た記憶が、おぼろげに残っています。

それは女優の一人芝居。

舞台装置は、楽屋のメイク室のセットが、ただひとつ。

劇中劇になっていて ある女優が、楽屋でメイクをしながら自分の人生を振り返るというあらすじでした。

客席側に鏡があるという設定で

女優は、観客に向かって眉を書いたり、口紅を塗ったりしてみせながら 泣いたり笑ったり、時には怒ったり_独り、思い出話を語ります。

娘時代を語る時は、ほんのりピンクのチークを差したり 辛い思い出を語る時は、思わずメイクが崩れてしまったり。。。

細かい点は、もう忘れてしまいましたが その『化粧をすること=女の一生を生き抜くこと』というシチュエーションが 艶っぽく、切なく、そして逞しく_ とてつもなくリアルでドラマチックだったことだけは鮮烈に覚えています。

そして今、花嫁の「おしたく」を撮影するとき

あの一人芝居が私の脳裏をよぎります。

結婚式の写真で残したいことは、いっぱいあります。

愛、幸せ、絆、希望、、、

でも、「おしたく」の写真で残したいのは ずばり、『女の一生のひとかけら』 。

結婚式という晴の日。

表舞台へ出る直前に鏡を覗き込む花嫁の表情には

単なるヘアメイクのチェックという次元を超えた、 今まさに人生の新たな第一歩を踏み出そうとしている女性ならではの 気高さ、揺らぎ、そして「すごみ」さえ帯びた独特の美しさが宿っています。

それは誰も知らない・・・きっと花嫁自身も気づいていない 秘密の表情。

私の夢は、世界中の花嫁の そんな「ひとかけら」を写真にすることなのです。